「しじみ」の効能や効果について
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概要
味噌汁の具の定番のひとつである「しじみ」。昔から日本では食されており、ヤマトシジミは北海道から九州まで、日本の全域の汽水湖や河川で生息しています。
しじみはうま味成分を含んでおり、肝臓に良い食材としての認知度も高いです。
そのため、近年ではサプリメントの素材にもなっています。
今回は「しじみ」について知っていきましょう。
「しじみ」の歴史
日本には主にヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミの3種が生息していました。
なぜ過去形かというと、セタシジミは琵琶湖の固有種で、シジミ漁の対象になっていますが、環境の悪化や乱獲に伴い大幅に数が減りました。
そして、マシジミは昔は水田周辺の小川で多く見かけましたが、化学肥料や農薬、環境整備といった環境の変化もあって姿を消しました。
そのため、現在はヤマトシジミがシジミ漁業の漁獲量の99%以上を占めています。
私達が普段からしじみと呼び、食べているのはヤマトシジミだったのです。
しじみは古くは縄文時代から食されていたことが「貝塚」から確認でき、当時の人々が捨てた貝殻が多く残っています。
7世紀後半から8世紀後半頃の現存する最古の和歌集である万葉集にも「四時美」という表現で恋の歌が詠まれています。
江戸時代になると、庶民たちの経験からしじみの効能が知られるようになり、落語の「しじみ売り」などにも登場しました。
古来から親しまれていたしじみですが、昭和50年代には3万トンあった漁獲量も、環境の変化によって現在はその1/10以下になってしまいました。
名産地
島根県
島根県松江市の宍道湖(しんじこ)はしじみの名産地として全国的に有名です。
宍道湖は汽水と淡水の入り交じる汽水湖で、しじみだけでなく色々な生き物が生息しています。
しじみの漁獲高は日本一で、宍道湖で水揚げされる魚介水の中ではシジミ漁が9割も占めています。
そのため、日本三大しじみのひとつに数えられています。
一時は、漁獲高が急速に減少しましたが稚貝を栽培して放流したり、禁漁日を増やすなどの対策により漁獲高の回復に成功しました。
宍道湖から見える夕日は幻想的で、湖を赤く染めます。
青森県
青森県のしじみの水揚げ量は島根県に負けず劣らずの量で、一時期は日本で1位になったこともあります。
島根県の宍道湖とは違い、小川原湖は太平洋側の海水が入り込む汽水湖となっています。
十三湖では、ヤマトシジミが育ちやすい環境ということもあって、面積が小さいにも関わらず水揚げ高は、宍道湖を超えたこともあります。
こちらの湖では宍道湖と同じく日本海側の海水が入り込む汽水湖になっています。
ここも日本三大しじみのひとつに数えられています。
茨城県
茨城県の涸沼(ひぬま)では青森県と島根県ほどではないものの、全国的にも知名度が高く有名です。
海水と真水が入り混じった汽水湖で海水の割合が少し少ないことから、こちらもヤマトシジミが育ちやすい環境にあります。
涸沼ではヤマトシジミがすくすくと育ちやすこともあって、身が美味しいことで評判です。
2015年には、国際的に重要な湿地ということでラムサール条約にも登録されました。
近隣には駅やレジャー施設があり、キャンプなども楽しめます。
保存方法
貰いものや購入した際にしじみの量が思ったより多かったということもあります。
通常、生鮮食品は冷凍よりも生の方が美味しく食べられます。
ですが、しじみに限っては冷蔵で保存するよりも、冷凍保存するとより美味しくなります。
冷凍することで、あえてしじみの細胞を壊し、うま味成分やグルタミン酸・アラニンが増加し、美味しさが増します。
冷凍で保存する場合は砂抜き(砂出し)を行ってから、しじみ同士をこすり合わせるように洗い、殻に入った状態で冷凍保存します。
冷凍保存した場合は、1ヶ月から2ヶ月を目安に食べ切ってしまいましょう。
また、解凍したり再冷凍せず、そのまま使用すると効果的です。
冷蔵保存の場合は夏場は3日程度、冬場は1週間程度が目安になります。
効果・効能
肝機能を良くする
しじみには「オルニチン」という成分が含まれていることは有名です。
では、効果があるのでしょうか?
まず、オルニチンは肝臓の機能を高める効果があります。
肝臓は代謝・排出・解毒などの役割を果たし、アルコールの分解も行っています。
肝臓は再生機能が高く、病気などの症状が出にくい部分です。
そのため、“沈黙の臓器”と呼ばれ、症状が表に出てきた時には大事になっていることも。
オルニチンはそんな肝臓をケアする役目も持っています。
美肌効果
オルニチンには肌が生まれ変わる“ターンオーバー”を促進させ、美肌効果があるとも言われています。
オルニチンが寝ている間に分泌される成長ホルモンの分泌を促し、新陳代謝を促進することで新しい肌を作り出してくれます。
オルニチンが肝臓の機能を高めることで、代謝を高めるということは美肌だけでなく、ダイエットにも影響を与えるということです。
そのため、痩せやすい体質づくりの助けにもなってくれます。
冷え性の改善・貧血予防にも
しじみは小さいながらも栄養価は高く、冷え性の改善にも効果的な食材です。
近年では男性・女性に関わらず冷え性になる人が増えてきています。
忙しい現代社会人は自然と栄養が偏りがちで、食生活に乱れが出てしまいます。
特に冷え性や貧血の人に多いのが、ビタミンとミネラルの不足。
ビタミンとミネラルは人間にとって必須栄養素で、これが不足することで冷え性や貧血に陥ってしまいます。
人間はビタミンとミネラルが不足している状態が続くと細胞の生命活動が抑えられ、エネルギー不足になります。
そのため、体温は上昇せず、冷え性になってしまいます。
また、しじみには鉄分が豊富に含まれています。
体内の鉄分が不足すると、赤血球が減り、赤血球そのもののはたらきが悪くなり、それによって貧血症状が出てきます。
しじみにはこれらビタミン・ミネラル・鉄分などがバランス良く含まれており、食生活の乱れによる栄養不足の改善に一役買ってくれます。
カルシウムが豊富
しじみにはカルシウムも豊富に含まれています。
日本人のカルシウム不足が叫ばれて久しいですが、カルシウムが成長期に不足すると成長が抑制され、骨粗鬆症の原因にもなります。
また、カルシウムは脳神経の興奮を抑える働きがあり、カルシウム不足が続くとイライラしやすくなってしまいます。
牛乳を毎日飲み続けるのも良いですが、それだけでは1日に必要な量のカルシウムを摂取するのは難しく、結構な量を飲み続ける必要があります。
牛乳100gに含まれるカルシウムの量は110mgなのに対し、しじみ100gに含まれるカルシウムの量は130mgと多いです。
しじみは貝類の中でも、カルシウムを多く含んでおり、カルシウムを効率よく摂取することができます。
美味しい食べ方
味噌汁
しじみ料理の定番といえば、しじみの味噌汁です。家庭で簡単に作ることができるのが良いですね。
栄養価の高いしじみを味噌汁にすることで手軽に調理でき、ダシに風味付けができます。
下ごしらえもしじみの砂抜きを行うだけで、煮立った鍋の水に入れて沸騰させて、味噌を入れるだけと面倒も少ないです。
しじみの味噌汁なら寒い日や二日酔いの身体に味噌汁の温かさが染み渡り、しじみが肝臓の働きを助けてくれます。
代謝機能が高まれば冷えた身体も早く暖まり、二日酔いの時はしじみの味噌汁が定番の人も珍しくありません。
また、味噌にはコリンが含まれており、肝臓の中に入ったアルコールが脂肪になるのを防ぐ働きをしてくれます。
しじみの酒蒸し
しじみの酒蒸しも手軽に作れるしじみ料理です。しっかりと砂抜きを行い、よく洗ったしじみと酒を鍋に入れて、蓋をして蒸し上げます。
しじみの口が開いたら、お好みで塩とネギやニラの小口切りをふって、火を止めます。
鍋底に溜まったダシ汁を付けて食べるとしじみと酒の風味が合い、お酒のつまみにピッタリです。
酒のアルコールは熱で飛んでいるので、小さなお子様でも美味しく食べられます。
しじみご飯
しじみが多くあるのであれば、しじみご飯にしても良いでしょう。基本的には「しじみの酒蒸し」と同じようにあらかじめ砂抜きしたしじみと酒を鍋に入れて火にかけます。
殻が開いたらしじみの身を取り出し、ダシ汁は残しておきます。
次に、といだお米に水と先ほどのダシ汁を合わせて、炊く分量にしたら30分ほど浸します。
30分経ったら、醤油、塩、みりん、しじみの身を入れて炊きます。
お好みで、ししいたけ、にんじん、ゴボウなども入れて炊き込みご飯にしても良いですね。
しじみのしぐれ煮
しじみのしぐれ煮は、ご飯のおかずやお茶漬け、おにぎりの具、お酒のツマミなど色々な食べ方ができます。こちらも「しじみの酒蒸し」と同じく砂抜きをしてよく洗ったしじみを酒蒸しにし、口が開いたらしじみとダシ汁に分けます。
しじみの身を取り出し、ダシ汁、砂糖、醤油、酒も入れて一緒に煮ます。
煮立ったら一度しじみと取り出します。
汁に生姜とみりんを加えて、焦げないように注意しながら、とろみがでるまで煮詰めたらしじみを戻して完成。
まとめ
栄養価が高く、手頃に購入できるしじみはまさに庶民の味方ともいえる食材です。お酒をよく飲む人にはツマミにもなり、二日酔いによる症状を和らげてくれるので、重宝されています。
ですが、肝臓に病気を抱えている方は鉄分の多い食品に制限がかかる場合があり、しじみや貝類もこの制限に含まれます。
肝臓に病気を抱える方は医師の方と相談するなどの注意が必要です。
栄養が偏りがちな現代だからこそ、しじみを食べて、バランスの良い食事を心がけたいものです。