東京スカイツリー:都市論
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東京スカイツリー
ニコ生PLANETSで東京スカイツリー
批評家・宇野常寛さんが編集長を務める”PLANETS”とニコニコ生放送のコラボレーション番組「ニコ生PLANETS」で東京スカイツリーの回がありました。放送された日時は2012年6月20日で、番組名は「徹底討論!東京スカイツリー」です。
東京スカイツリーのタワーとしての話から、スカイツリーが建つ事で東京という都市にどういった影響を与えるのかを評論しています。
ニコ生PLANETS7月号「徹底評論! 東京スカイツリー」
私自身は、東京という都市はとても好きなのですが、長く住んでいたわけでもなく、ましてや東京スカイツリーに行った事があるわけではありません。(いつかは行ってみたいと思っています。)
そんな私でも、この回のニコ生PLANETSは興味を持って見させてもらい、とても楽しむ事が出来ました。
私のような地方に住んでいる人間にとって、マスメディアを通してでしか、情報が入ってきません。東京スカイツリーに関しても、最近ではそこまで騒ぎ立てる事がなくなりました。
今回は、ニコ生PLANETSの”徹底討論!東京スカイツリー”の私なりの解釈を記事にしたいと思います。
出演者紹介
宇野常寛さんPLANETSの編集長の宇野さん。通常の回もそうですが、司会進行役をされています。話が脱線した時に戻したり、散らかった時にまとめています。
中川大地さん
ニコ生PLANETSに出演された事があるようです。私は初めて拝見しました。どうやら見逃した回で出演されていたらしいです。文筆家・編集者の方らしいです。
今回の回のメインパーソナリティ的な方で、東京スカイツリー論という著書を出版されています。
石岡良治さん
ニコ生PLANETSでは、もうお馴染みですよね。日本最強の自宅警備員を自称する批評家です。石岡さんが考察を披露するレギュラーコーナーがあります。
滑舌が良くないのとまとめ方がお上手ではないですが、切り口や視点は素晴らしいです。宇野さんよりも石岡さんの考察を期待している人も多いはず。
門脇耕三さん
建築学研究者の方らしいです。門脇さんの東京スカイツリーの考察、そして東京の都市論はとても興味深いものがありました。
時間の関係上かもしれませんが、中川さんともう少し議論をしてほしかったです。
住民活動
今回は東京スカイツリー論を出版した中川さんの話を主軸として進行していきます。中川さんは東京スカイツリーができた東京都・墨田区の出身で、それがキッカケで東京スカイツリー論を出版されたそうです。東京スカイツリー論の褒められるべき点は、スカイツリーが建つ前に出版された事です。完成後にどういう進化を見せるかわからない段階から、的確に考察されています。
地元の人の視点で考えると巨大な建造物が建つのは、信じられない話です。見上げれば、今までそこになかったものが目に移ります。日差しが遮られる事もあるでしょう。
東京スカイツリーの計画段階から、東武鉄道や墨田区に要望を出すなど、住民活動も行われていたそうです。
もしかしたら反対の意見もあったのかもしれませんが、この要望は反対をするためのものではないようです。建つ事は決まっているのだから、それを受け入れるためにどういったタワーにしてほしいのか、住民なりの意思を東武鉄道や墨田区に示すためのものだったのでしょう。
どこまで細かな要望があったのかはわかりませんが、今では地元住民に愛されるシンボルになっているようです。
タワーが建つというより、巨大なショッピング施設ができる
ここはある意味今回の討論の核心部分であり後述しますが、タワーの役割も変わってきました。以前は”シンボル”としての意味合いが強かったタワーで、権威の象徴だったのですが東京スカイツリーはそうではない、のです。東京スカイツリーの近辺には”東京ソラマチ”という名でショッピング施設もできました。実は、巨大な建造物が建つ事よりも、このような大きなショッピング施設が出来る事の方が、地元住民やその他人々の暮らしを変えてしまうという見方です。
東京スカイツリーに訪れる人々が立ち寄る施設ではありますが、ここまでの規模のショッピング施設だと、「ショッピングをしに行く人」も多くなるわけです。
ただ、こういう話にありがちな”地元の商店を脅かす存在”として話が発展していくわけではなく、中川さんの見方は人々の暮らしを豊かにする方に傾いているように感じました。それは、”買い物が出来るようになって便利になる”という役割にとどまらず、”タワーが通常交わる事のない人と人を繋げる”という広い意味に感じられたのです。
見る方向によって違う
東京タワーと違い、見る方向によって見え方が違うのが建造物としてのスカイツリーの特徴でもあります。これは、東京タワーやエッフェル塔、富士山のように人々が頭の中に思い浮かべるスカイツリーの姿が違う、という事になります。遠くから見るとそうでもありませんが、近くで見れば見る程見え方が違うらしいのです。
これは、三角形から円形へ徐々に変化していくので、見る方向によって角度がもたらすシルエットが変わっていく、との事です。
頭に思い浮かべるタワーの姿が、人によって異なるのは少し面白い話かもしれません。
イメージが薄いのがスカイツリー
さて、根本的な部分に立ち返りますが、東京スカイツリーとは何ために建造されたのタワーなのでしょうか?冷静に思い返すと答えは簡単で、地デジ化に伴うテレビ電波送信を東京タワーから移すためです。と言っても地デジ化してから久しく、東京スカイツリーに移行される前は東京タワーから送られていました。
東京タワーで地デジ化に対応できるなら東京スカイツリーは必要がないと思ってしまいます。テンポラリー的な意味では東京タワーでも大丈夫のようですが、長い目で見ると東京タワーでは力不足のようです。
理由としては、東京タワーが建造された頃は都市部の建築物はさほど高くはありませんでしたが、現在では高層ビルに阻まれて電波の障害になってしまうようです。
なので、東京タワーより高い電波塔が必要だったのです。
前項で挙げた、建造物としてシルエット的イメージが捉えづらいという点と、タワーとしての存在意義が薄い(本来は薄くないですが)事から、東京スカイツリーのイメージは非常に曖昧なものになっています。
すべてが計算し尽された建造物なはずなのにイメージとしては曖昧なものに仕上がった東京スカイツリーは、ある意味ではとても日本らしいタワーと言えるかもしれません。
タワーの歴史
エッフェル塔・東京タワー
タワーと言えば、真っ先に思い浮かべるのがパリのエッフェル塔や東京タワーでしょう。国や都市のランドマーク的な存在になっていて、それを含めて景観になっています。特に東京タワーはテレビ放送局のアンテナをまとめる電波塔として建造されていて、電波塔としての役割とシンボルマークの意味と両方を兼ね備えたタワーだと言えるでしょう。
建造された当初は、そのシルエットがエッフェル塔の真似と言われる事もあったそうですが、自立式タワーの構造上末広がりになるのは当然だそうです。
スカイツリーの事実上のライバル、広州塔
2009年に中国で建てられたタワーで、高さは600m。アジア圏の国という事、時期や高さを考慮すると、東京スカイツリーの事実上のライバルのタワーだと言えるでしょう。網目模様のデザインになっていて、デザイン的にはなかなか優れているのではないでしょうか。
東京スカイツリーの高さは634mなので、高さで言えばスカイツリーが勝っている事になります。
ブルジュ・ハリファ
アラブ首長国連邦ドバイにある超高層ビルで、2010年に建設されました。ブルジュ・ハリファは自立式電波塔ではなく、”ビル”という建造物のくくりになります。これまで”自立式タワーの高さ”で競っていた流れを、自立式タワーでなくても圧倒的な高さを誇る事で壊してしまった世界一の建造物です。
東京スカイツリーが建設されたのが2012年で、ブルジュ・ハリファはスカイツリーが建つ前に完成した事から、スカイツリーの自立式タワーでの高さ世界一は、虚しい称号だと嘆く人もいます。
神に近い建物という名を欲しいままにしているブルジュ・ハリファ。
タワーとしての建造物ではないにも関わらず、タワーの歴史に影響を与えたとんでもない建造物なのです。
歴史まとめ
これまでは国家の権威やシンボルとしての役割があったタワー。ですが、高さ競争においてもブルジュ・ハリファを始めとする自立式タワーではない建造物に負けてしまった事から、東京スカイツリーは権威の象徴やシンボルではないような気がします。
スカイツリーにかかわる、東京都市論
ここから、タワーそのものというより、東京の都市論の方に展開してお話していきたいと思います。東京スカイツリーが東京という世界有数の大都市にどのような変化を及ぼすのでしょうか?
町同士の戦い
東京は西と東の対立を抱えながら都市の形を変えていった特別な都市です。地方でも西部と東部のどちらが都会?というのは話のネタとして挙がる事がありますが、それは県庁がどちらかにあるとか、人口の推移がどうだとか、抽象的なイメージのものが多いが気がします。
実質的な発展を伴いながら対立を繰り広げている町は、東京の他ありません。
イメージが定義されない鉄道網が発達した町
地下鉄が発達した町、東京。土地代も高く駐車場代も高い東京で、自家用車を所有するコストを考えると、自家用車を所有しない方が安上がりです。
地方では車がないと不便で困ってしまいますが、これも東京という都市の特徴の一つなのです。
この地下鉄が人々に与えている影響は交通の便利さだけではありません。
私達は地下鉄を乗るあまりに、町と町の方位上の関係や距離感を掴めなくなってしまったのです。実は隣同士にある町でさえも抽象的な「近い」というイメージを持つだけで、歩かずに地下鉄を利用する事が多々あります。
例えば、歩いて5分で行けるはずの隣町へ行くのに、駅構内の徒歩の時間や乗り降りの時間も含めて、10分かけて地下鉄で行っているという現象が起きているかもしれないのです。もちろん、徒歩より地下鉄の方が速いので地下鉄に乗っている実質的な時間は3分程度かもしれませんが、トータルで考えると歩いた方が速いかもしれないのです。
そして、一番驚くべき点はそういった現象に気付く事すらないまま、私達は地下鉄に乗り続けているという事。
地上を走る鉄道なら車窓から景色が見れます。
それは線路を沿って走るだけのものかもしれませんが、地下鉄と比べれば比較にならない程、視覚的に場所感覚を得る事ができます。
私達は地下鉄に乗り、窓から見える薄暗い壁を見ながら目的地へと向かっているのです。
それによって、それぞれの町はただの点であり、線で繋がる事はありません。その点は、私達が何もしなくても地下鉄が結んでくれるからです。
町それぞれが分断されているようなイメージ。そしてそれに気付いていないのです。
分断されているからこそキャラが立つ
前項で述べていた点のイメージ、町と町が分断されている、私達が方位感覚や距離感覚を失ってしまったのは、悪い事を生んでいるわけではありません。東京のそれぞれの町がそれぞれ発展していけたのは、良い意味で孤立していたからだと考えられるためです。通常、町の発展していく傾向というのは、中心部を軸として線で結ばれて発展していきます。
それが町と町が分断しているようなイメージがあったため、点のみで発展を遂げる事が出来たという考え方です。発展しては地価が高騰し、高騰しては町を移しと、それを繰り返してきました。
また、単に発展するだけでなく、秋葉原のようにキャラを立たせながら発展していくのも特徴です。
こう考えると、東京という都市が発展した事と地下鉄とは、切っても切れない関係であったという事がわかります。
スカイツリーによって場所性が定義されてしまう
方位感覚・距離感覚がない事が及ぼす良い意味での影響を説明してきましたが、東京スカイツリーはこれにどういった影響を及ぼすのでしょうか。これまでは、超高層ビルの向こう側の世界がどうなっているのか、それすらもわからなくなってしまっていました。
しかし、スカイツリーが建つ事により、事実上のベンチマークが刺されてしまったと言えるのです。
これは、場所によって見え方が違う、という事にも関係しています。
東京スカイツリーを軸として、感覚を取り戻す可能性があるのです。
これにより、無尽蔵に発展してきた町も、以前のような発展の仕方をする事がなくなる恐れがあります。
また、東京が抱えている西対東の構図がより一層強くなる可能性も考えられます。
まとめ
最後になりますが、東京スカイツリーとは一体何なのでしょうか。東京タワーが建設されてきたような人々の希望の象徴というわけではなく、地デジ電波塔として建設されているにも関わらずどこか必要性を感じられない東京スカイツリー。
今は、東京ソラマチから成るショッピング施設としての、側面の方が強く出ています。
石岡さんがコーナーで言われていた、「スカイツリーは東京タワー+サンシャイン60」というのは、とても適切な表現だと感じました。
現時点でそうですが、これからはデートコースや観光名所の一つとして役割を担う事が予測されますね。
東京タワーは、当時は希望の象徴でした。
東京タワーの時に人々が感じていたような希望を、今後東京スカイツリーから感じる事ができれば、スカイツリーの存在はまた一つ大きなものになるかもしれません。
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